デスク周りは混沌。でもアウトプットは洗練。そんな人の話。
机の上が混沌としてるのに仕事はサクサク進む──身近にそんな人いませんか?
書類の山、使いかけの付箋、謎のケーブル、積まれたお菓子…
「整理整頓は悪」と主張しかねない机からの圧力がやばい。
ところがどっこい、仕事が早い。ミスは少ない。成果も出しちゃう。
いったいどんな仕組みなんでしょうね。
ビジネス本やウェブサイトなどで「仕事ができる人は、デスクも整っている」なんて言葉を見聞きしたことはないでしょうか。
私もそうだと思っていました。
でも現実には「机は散らかり放題なのに、仕事のパフォーマンスは高い人」がたしかに存在します。
閾値(いきち)を外した人 —— 現代に生まれた新種か、デキる人の突然変異なのか?
そこで今回は「机の上が散らかっているのになぜか仕事ができる人」の謎を掘り下げてみようかと思います。
一般的な“整理整頓=できる人”というイメージ
「デキる人は、机もスッキリしている」──というのは、ビジネス書や自己啓発系の記事でありがちなフレーズだし、ネットを少し検索すれば「一流の仕事術」「成功する人のデスク環境」「片づけで年収が上がる」なんて見出しがゴロゴロ出てきます。
整然としたデスク、無駄のない動線、ミニマリスト的なガジェット配置。
できる優秀な人と机のきれいさはセットで、比例しているかのような勢いですよね。
優秀というのはさておき、私自身が典型的なそれです。
整理整頓が「仕事の土台」になっていて、机の上に物が増えるとなんとなく落ち着かないし、片づけてからでないと仕事モードに入れないタイプです。
片付いていて余計なものが置いていない机ランキングがあるなら、いつきデスクさんは優勝できる自信があります。
要するに「散らかっている=頭の中もゴチャついている」と思ってきました。
だからなおさら、その概念をぶち壊す人に出会って、ちょっとショックでした。
どう見ても“カオス”な机から、スムーズにタスクをさばいていく人が実在するからです。
散らかっているのに仕事ができる人の特徴
いまの会社の上司のAさんがまさにその典型で、先ほどの例の逆で『机のうえ汚い社会人コンテスト』とかあったらぶっちぎりで優勝するんじゃないのこの人、くらいの大物です。
入社早々というより、初対面でAさんに挨拶しつつ、彼女の机の上が気になって軽く5度見くらいしました。
え…これ机なん? って…
彼女のデスク周りは、近寄りがたいほどの“聖域”状態でした。
実際の様子と私の心情はこんなかんじ。
・自由に使えるスペースはA4用紙一枚分しかない。
→ 原稿めくったあとどこに置くの?
・マウスの稼働範囲は半径2センチ程度
→ ドラッグ&ドロップをちゃんとこなす。ついでに操作が速い。奇跡?
・机の上にある書類の山を触る気配がない
→ 視線を遮る壁代わり? あ、APEXの遮蔽オブジェクト思い出した(知らない人すみません)
・机の下には少女漫画がびっしり詰まっており、足元の稼働範囲もせまい。 → 机の上だけでもおなかいっぱいだけど、机の下でも物語が展開されてそうだなー(適当)
・私物が積まれているため引き出しが引き出せない
→ 開けたのを見たことがない。むしろ開けたらいけない気がする。
にもかかわらず、いつも仕事は早くて精度は高い、要点を押さえていて判断も的確。メールの返信は秒速レベルで他の人が忘れていることもばっちり覚えてくれてます。
見た目のカオスと、アウトプットのスマートさ。うーん?
どうやら彼女の中には、「見えない整理棚」のようなものが存在していて、視覚的には散らかっていても、頭の中では全ての物やタスクが配置済みなのだと思われます。むしろ視界に情報が散らばっていることで、必要なものにすぐアクセスできるのかもしれません。
(ニュータイプってこんな感覚で物を捉えてた気がする。もしやAさんって)
科学的・心理学的な視点
「それは単なる例外では?」と思った方へ。
実は、“散らかった環境”と“創造性や仕事のパフォーマンス”には、れっきとした関係があるらしいです。
アメリカ・ミネソタ大学の研究では、整理された部屋にいる人よりも、わざと散らかった部屋に置かれた人のほうが、より創造的なアイデアを出したという結果が出ているとか。
研究者いわく、整然とした空間は「秩序ある考え方」につながる一方で、散らかった空間は「常識にとらわれない柔軟な発想」を促すのだとか。
つまり、机の上が混沌としているのは「発想が自由であること」の副産物なのかもしれないですね。
実際、画家や作家、プログラマーなど、クリエイティブな分野で活躍している人ほど、作業スペースが混沌としていることは珍しくないようです。あのアインシュタインやスティーブ・ジョブズのデスクも、写真を見る限り結構な散らかりっぷりです(むしろ安心しますよね)。
また、心理学の観点では「視覚的な刺激の多い環境のほうが集中力が上がる」というタイプの人もいます。
これは、脳が“適度な雑多さ”を情報処理の刺激として受け取るためで、逆にあまりに片づけられた空間だと落ち着かず、かえって集中できないというケースもあるそうな。
つまり「散らかっている=だらしない」という一元的な見方では測れない、多様な脳の働き方があるということ。
片づけて落ち着く人もいれば、雑多な情報の中でこそ頭が冴える人もいる。どちらが正しい、ではなく、自分にとって最も自然に力を発揮できるスタイルが大事、というわけです。
じゃあ、整理整頓って無意味なの?
ここまで読んできて、もしかしたらこう思った人もいるかもしれません。
「それならもう片づけやめて今日からワイルドに散らかしていこう」
落ち着きましょう。
整理整頓が「意味ない」わけではないんです。
というか、そうであってほしい。
大事なのは「その人に合った環境かどうか」なので、“脳のタイプ”や“仕事の内容”によって、適したスタイルが違うということなんです。
たとえば、思考を整理するのが苦手な人や、外からの刺激で集中が乱れやすい人にとっては、整った環境は大きな助けになりますよね。
私自身も、何かに集中したいときや新しいアイデアを考えるときは、一回机をまっさらにしてリセットしたくなります。
一方で、頭の中で情報を立体的に扱えるタイプの人、常に複数のタスクが同時進行してる人にとっては、散らかってるように見える環境の方が自然に働けたりする。つまり、「散らかってる=非効率」とは一概に言えないというわけです。
それから、「散らかってる=放置してる」ともちょっと違います。
仕事ができる“散らかし派”の人たちは、あくまで自分なりの秩序を持っていて「必要なときに、必要なものにすぐアクセスできる」状態をキープしている。それが他人には“カオス”に見えるだけで、本人の中ではちゃんと地図があるんですよね。
その証拠に、Aさんに「〇〇ってどうなってます?」って聞くとすぐに必要な書類が出てきますんで。
特盛りの書類の山から「えいっ」と抜き出す光景がちょっと面白いのは内緒ですけど。
なので結論としては、
「散らかってる人がダメ」でもなければ、「片づけてる人が正解」でもない。
“自分にとってパフォーマンスが上がるスタイル”を知ってる人が強い。
ということなんだと思います。
机って、それぞれの個性が出ていいですよね。
机を見ることで、自分の志向が再認識できるかもしれないですよ。